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食肉加工の歴史

紀元前から加工の歴史あり
 食肉の加工がどこから始まったのかには諸説ありますが、たとえば食肉が食事の中心であるヨーロッパでは、何千年も前から食肉の加工品がつくられていました。紀元前8世紀頃のギリシャでは、すでに塩漬けや燻煙された食肉の加工品が食べられていたようです。ローマ時代には、ハムが軍隊遠征時の携帯食糧として使われていました。

 素朴な製法でつくられていた食肉加工品を、多様な品種をあみだし品質を高めていったのは、ハムやソーセージの本場であるドイツです。
 土地がやせているうえに気候が厳しく、農耕には向かないドイツでは、豚が作物の穫れない冬をしのぐ、大切な食糧でした。ですから秋までに太らせた豚を、頭の先から脚の先、血の一滴まで無駄にしないため、また保存のため、さまざまな工夫が凝らされてきました。


日本の食肉加工、はじめの一歩
 日本では、仏教の普及とともに、肉食がタブーであった時代が長く続きました。江戸時代、長崎でハムがつくられたという記録も残されていますが、本格的につくられるようになったのは、明治時代以降です。

 最も古い記録では、明治5年に長崎の片岡伊右衛門が、アメリカ人のペンスニに製法を伝授されてつくったとされています。一般的に国産ハムの元祖といわれているのは、明治7年、現在の神奈川県戸塚でホテル経営をしていた、イギリス人のウィリアム・カーティスが始めたハムづくりです。
 この製法を斉藤満平が引き継ぎ、明治20年には操業の許しを得、正式にハムの生産が開始されました。当時の戸塚は鎌倉郡に属していたため「鎌倉ハム」とよばれました。現在では「鎌倉ハム 富岡商店」が唯一、鎌倉で操業を続けています。


日本での歴史はこれから
 現在日本でつくられているのは、ドイツ式製法が主流です。それは、第一次世界大戦で捕虜となったドイツ人が日本にとどまり、製法を広めたこと、畜産試験場が、ドイツ人捕虜により伝授されたソーセージの製造技術を、一般公開したことなどによるようです。また、彼らとほぼ同じ時期に観光目的で来日したカール・レイモンも、ドイツ製法のハム・ソーセージを函館で生涯(1894〜1987)つくり続けました。

 高度成長期を境に日本の食生活は大きく変化し、ハムやソーセージが日本の食卓にもなじみのあるものとなっていきました。昭和40年頃まではプレスハムが主流でしたが、次第に本物志向の高まりとともに、ボンレスハム、ロースハムに比重が移っています。
 生ハムの製造が日本で許可されたのは昭和57年。日本の食肉加工品の歴史はまだまだ浅いのです。


写真提供:自然流ハム・ソーセージ・燻製(著者:井草正、撮影者:小倉隆人 農山漁村文化協会)